アナウンサーとしての新人研修を思い出してみる。

講座・研修

こどもアナウンス発声協会の指導者となり、
愛媛でキッズ・アナウンス・プロジェクトを立ち上げて、
私自身がアナウンサーとしてどんな研修を受けてきたのか、
どんな訓練受けてきたのか、
どんなことを大切にしながら仕事をしてきたのか、
あらためて思い起こしてみました。
NHK松山放送局にキャスターとしての採用が決まってすぐに
まず「NHK日本語センター」で1週間ほど
「キャスター研修」として、合宿生活を送りました。

そこでは、
放送について、
発声・発音、
文章の読み方、
ニュース原稿の書き方、
テレビのためのメイクや髪型、服装について、
を実践的に学びます。
全国各地の新人キャスターが集まっての研修です。
方言が抜けなくて苦労している人もいましたし、
アナウンススクール出身で、慣れている感じの人もいました。
私のアナウンスメントの基本の「き」は
「日本語センター」からのスタートでした。
そして、日本語センターでのキャスター研修が終われば、
それぞれの放送局で実践研修に入ります。
すでに「ニュース」と「音楽番組」の担当が決まっていたので
放送に耐えうるレベルにならなくてはなりません。
私は元々アナウンサー志望では無かったので
アナウンススクールにも通ったことはなく、
まったく白紙の状態からのスタートでした。
それでも、放送担当日は迫っています。
初鳴き(初めて電波に声が乗ることをこう言っていました。)
まで、10日ほどしかありません。
私は「ニュース」と「音楽番組」の担当が決まっていました。
まずはとにかく「ニュース」が読めるようにならなくてはなりません。
私を指導してくれたのは、
当時のEA(エグゼクティブアナウンサー)とアナウンス統括でした。
まずはEAの指導を1週間ほど受けます。
EAの研修内容は、
その日のニュース原稿を教材に、
そのニュースについてなんだかんだと語り合う、
そんな研修でした。
まず「読んで」
内容について語り合って、
また「読む」
それがほとんど。
ああ読め、こう読め、という指導はほとんど無かったように思います。
当時の私は「???」でした。
で?これで読めるようになるの?
と。
でも、今となっては、この研修がどれだけ本質的なものだったのかがよくわかります。
「原稿の意味」がどれだけ理解できているか。
それが理解できていなければ、
どんなに綺麗に「音声化」されていたとしても
伝わらないのです。伝わりにくいのです。
私が今、アナウンス講座や、朗読講座、話し方講座で
一番大切にしているのは「意味」を理解して「伝えること」です。
アナウンスや朗読だけではなく、小論文や面接でも基本は同じ。
「伝えたいことを自分でどのくらいわかっているか」
で、伝わり方は変わります。
とにかくまず「意味」を読み込む、という研修。
この研修があったからこそ、
その後も「読み」に関しては、
ずっと高い評価をいただくことができているのだと思います。
こういう研修時間を贅沢にもしっかり取ってくれた
当時の上司、EAに大感謝です。
しかし…
贅沢な研修の次は、
アナウンス統括による
クラクラするような訓練!?の日々が待っていました。
「読み」と「タイムキープ」の特訓です。
「読み」に関しては、
ニュース原稿を読んでは録音し、
録音しては聞き直し、
一音一音のこ音の高さや子音、母音の発音の甘さを指摘されます。
当然、その理由は、
それができていないことで「意味」が伝わりにくくなるから。
そしてやり直し、再録音。
助詞の高さ、長さ、イントネーション、文全体の流れ、etc.
読んでは録音を聴かされて、細かく指摘される数時間。
できてないことを思い知らされることもあれば、
指摘されて自分で聴いても違いがわからないこともあって、
悔しかったり、しんどかったり、
今思い出してもハードな特訓でした。
さらに、実際の放送では、「読み」だけではなく
「タイムキープ」も必要です。
ラジオの毎正時前の流れニュースでは、
4分55秒という決められた時間内にきっちりおさめなくてはなりません。
時計の秒針を見ながら、タイムキープをする。

慣れると簡単なこと、当たり前のことですが、
初心者にとっては一番緊張するところです。
余談ですが、私はそうやって、新人の頃に
「アナログ時計の秒針」を見てタイムキープすることになれてしまったので、
後に民放でカウントダウンのデジタルのメーターのような物(名称がわからない)
でタイムキープをしなくてはならないときに、かなり戸惑いました。
実際に、ニュースで「初鳴き」を迎えるまでは
主に「読み」と「タイムキープ」の訓練にあけくれていました。
さらに乗り越えなければならなかったのが、「フリートーク」と番組作り。
ニュース以外の初めての担当番組はフリートーク満載の「FM音楽番組」
50分間の生番組を、
ディレクター兼務で制作もパーソナリティーも担当しました。
CDやレコードも自分で操作。
技術さんが最終的な音チェックで一人ついてくれますが、
実質ワンマンです。
音楽番組に関しては、基本的には自由に何でもさせてもらえました。
その中で、番組構成、インタビュー、フリートークまで
一回一回の放送が終わる度に、
上司や先輩からアドバイスをいただいたり、褒めていただいたりすることで
日々成長できたと思います。
新人の頃もその後も、
「制作」「インタビュー」「構成」は、とにかく「実践」で鍛えられました。
新人の頃を思い出す度に、
私はなんて当時の上司、先輩たちに恵まれていたのだろうと思います。
当時の上司や先輩達は、
当時から超一流と言われていたり、
その後、全国的に有名になったり、
基本を見直すために必携のアナウンスの教科書を執筆していたり、
という方々もいます。
もちろん、そんなに目立つ活動をしていなくても
ずっと憧れて目標にしている先輩もいます。
さて、そんな方々の集まるアナウンスグループは、
賑やかです。
とにかくしゃべるのが仕事の人たちの集まっているところですし、
みなさん、声も良く通ります。
余談ですが、忘年会や送別会などは
うるさくて周りに迷惑がかかると、
貸し切りできる場所が良く選ばれていました。
その先輩方は話し上手で聴き(訊き)上手なので、
日常的なおしゃべりも多くさせていただいたのですが、
言葉使いに関しては、日常からたくさんの指摘を受けました。
「し」がつ じゃないの し「がつ」
「出れる」じゃないの「出られる」
「カロリー○イト」は商標
等々。
…本当に恥ずかしい指摘ばかりです。
今思えば、あの状態でよく放送に出ていたなと思います。
初鳴きの録音テープもどこかに残していると思うけれど、
恥ずかしくて聞けないですね。
あれから21年。
21年経った今も、私のアナウンスメントの原点はあの頃にあると感じています。
「意味」を理解すること。
その意味通り伝えるためにテクニックが必要になること。
それは、アナウンサーとしての活動だけではなく、
今、私が関わっているすべてのことに共通している根っこかもしれません。

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さて、ここからはイベントの告知です。
私がアナウンサーとして鍛えられてきたあれこれのエッセンスを
少しですが、体験してもらえるのが
「キッズ・アナウンス講座」(次回3月30日)
大人のための「キッズ・アナウンス教室」体験講座(2月24日)
です。
詳しくは、後日のご案内ということで。今日はおやすみなさい。
(フェイスブックページにはイベント作成しています。)

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